その日一通の郵便が我が家に届いた。
さっそく中にあるものを取り出す。

すぺしゃるちぃけっと?なんなんだこれは。
もしかしてこれって、いや、まさか。でも、万が一ってことだって・・・。
様々な推測を一時遮り、恐る恐る開く。すると、そこには。
ざわ・・・ざわ・・・
!?

キタアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
クライマックスシリーズ第一ステージ初戦の引換券じゃないか。
我らが千葉ロッテマリーンズ対福岡ソフトバンクホークスの試合。
しかもS指定席だと!断言しよう、私は今、今年一番の喜びに包まれている!
もう一度よく調べてみると「当選しました!」という紙も同封されてる。
母親がきまぐれで出したアンケートの賞品が見事に当たった模様。
もうねテンション上がったってレベルじゃないですよ。まじで。
ホークスの応援スタンドで観戦しなきゃいけないのがアレですけど、
マリーンズの大事な一戦をドームで応援できるんだぞ。
これで燃えなきゃ男じゃねえ。
私が何を盛り上がっているのか。まずはそこから説明しなければなるまい。
タマとバットを扱うメジャーなスポーツといえばもちろんオナニーですが、
似たようなスポーツに野球があることも忘れないでほしい。
毎年の白熱の高校野球、世界一の国を決めるWBCでの国民の盛り上がり、
そして海を越えて大リーグで活躍する選手たち。間違いなく今野球が熱い。
そんな中でも低迷を続けるのがプロ野球の人気。
最近では巨人戦さえ視聴率の悪さから、民放ではあまり放送されなくなった。
このままではいけない。プロ野球側もそう事態を重く受け止めているのか、
今プロ野球ではクライマックスシリーズというものが導入されている。
年間シーズンで1位になれなくても、日本シリーズへの出場権をかけて
1位から3位までの球団が最後の決戦に臨む。それがクライマックスシリーズ。
その短期決戦を制したものが、日本シリーズへと駒を進めるようになる。
つまり1位になれなかったチームにもチャンスはあるので、
シーズン終盤になってもより下位チームの順位争いが白熱。
騒ぎに乗じてプロ野球人気も上がっちまえよ、とそういう思惑である。
なんにしても1位になれなかった以上は、
マリーンズにはこれで這い上がってもらうしかない。
今日だってホークスとのいわば前哨戦にも勝利した。
ホークスはシーズン3位になることが決まった。
つまりこの瞬間マリーンズのシーズン2位が確定したのである。
ますます高まる期待。
今年最後の大一番を生で観戦できる。これが嬉しくなかったら嘘だ!
と、幸せいっぱいに夢を膨らませている私の元に、
突然弟がトチ狂ったことを言い出した。「俺も行く!」だと。
馬鹿いえ。チケッツは二枚しかないんだ。
てことは私と親父の二人で観にいくのが精一杯。そういうことだ。
「兄貴はいつも家にいるくせにこんなときだけ!!」
おいおいマイブラザー、私だって好きで引き篭もってるわけじゃないぜ。
これにはいろいろと大人の事情が複雑に絡み合っていてだな。
だから、その、つまり「おい、そんなこと今は関係ないだろ!」てことだ。
もはや弟も一歩も引かない様子なので、
私としても全面戦争だっていとわない構えですよ。
負けるわけにはいかないぜ。
妹「ねえ、ちょっといい?」
まったくのノーマークでした。妹は意欲的にチケットを眺めている。
まさかお前も参戦するというのか。頼むから勘弁してくれよ。
妹「このチケットの注意書きにさあ」
なんだよ。注意書きがどうしたっていうんだよ。
そんなことより今は、誰が試合を見れるのかその決着をつけようじゃないか。
妹「だからさ、この注意書きにさ、ただしホークスが
シーズン2位以内の場合に限りこの引換券は有効って書かれてるんだけどね。3位だったら福岡ドームで試合をやらないからとかなんとかでさあ。
で、
今ホークス3位だったよね?これって大丈夫なの?」

嘘だああああああああああああああああああああああッ!!!
嘘でした。いや嘘じゃなかった。違う!嘘であってくれ!いやまてそうじゃないだろ。そうなるとつまり、マリーンズが負けるってことだし。そんなことを望んでるわけではない。でも、しかし。ああもう、なんだよ。なんでなんだよ。福岡のロッテファンは結局こういう運命なのかよ。ちくしょうちくしょうちくしょう。
そのうちホイホイは考えるのをやめた。

人生おわた、いやまじで。